二代目のクイーン。
後ろから見た襟のデザインが気に入っています。組み立てた後のシルエットも広がった襟がアクセントになっているため、ボリュームのある形になりました。
三つの駒の中では一番詰めに時間がかかってしまいましたが、クイーンの駒も無事原型が完成し、型取り、鋳造の作業が終わりました。
パーツが三分割になったため、型取りの準備工程が増えて大変です。原型の形も複雑なので、型割りを考えるのと、シリコンを流し込むための粘土の埋没作業も少し手間取りました。
最後まで襟のデザインの詰めに悩みましたが、裏表に大きく装飾を入れ、外側は一段高く縁取るように装飾し、ボリュームのある曲線で構成することで、クイーンらしい優雅さと女性らしさを表現しました。可動の妨げになる後ろの角飾り部分は小型化しています。また、サイドはディテールを追加することで情報量を増やし、より精悍な印象になりました。
ティアラ状の角飾りは少し厚みを増やし、数を増やしてボリュームアップしました。
全体的な印象は初代の駒のイメージを踏襲しています。
襟の大きな装飾により、後ろから見ても特徴のある形になりました。
パーツは仮面、本体、襟の3パーツ構成。仮面はリベットで固定。襟は鋳造後にろう付けで接着します。
私はチェスの駒をデザインする時に最も大切なことは、駒としての記号を分かりやすく特徴として取り入れる事だと考えています。
チェスはゲームであり、スポーツであり、もちろんコレクションでもあり、私にとっては芸術でもあります。しかし、そのどれかに特化するのではなく、すべてをバランスよく内包したデザインにこそ、チェスの真価はあるのだと私自身は考えるのです。
そう考えながら、卒業制作としてチェスをデザインしたのが二年前。
甲冑をモチーフとする事を決め、そのデザインの中にチェスの記号を上手く取り入れる事に苦戦しながらも、何とか形にすることが出来ました。
そして今回課題としたのが可動を前提とした再デザインです。
可動させるということは、色々なパーツとの兼ね合いもあり、干渉するパーツは削らなければならず、しかしある部分を削るとチェスとしての記号が失われるため他にデザインを足して・・・など、甲冑+チェス+可動という三つの要素を崩さないようにデザインするのは難しい作業でした。
次は残るビショップ、ルークのデザインを再検討したいと思います。この二つはモチーフのデザイン上、可動にするかはまだ未定です。
今回も鋳造で問題が。やはりポーンと同じく、薄いパーツは気泡が入りやすく、中々うまく流れません。前回と同じく、ドリルで穴を開ける事で何とか抜けましたが、前回以上に抜けが悪く、一日やって二つがなんとか抜けたくらいでした。
どうしたものでしょう。
まずは現在原型制作中のクイーンver.2。
先に原型の完成しているポーンver.2に合わせて、バイザー部分は稼働式にします。
初代クイーン。この駒では後ろにトサカ状の飾りがありますが、稼働の邪魔にならないようにこの部分は小型化します。また、細かい部分のラインを整理する事で、より洗練されたデザインを目指します。
新しく女性らしさの記号として、16~17世紀に流行した大きな飾り襟をデザインとして取り込むことにしました。
制作中の原型です。フェイスオープンの調整が出来て、基礎部分は出来上がってきました。
襟のデザインが今ひとつまだ固まっていません。資料を見ながらまだデザインを探る事になりそうです。
次にキングのデザインです。こちらはまだデザイン画で検討している段階です。
チェスのキングの駒のシンボルは王冠とクロスです。以前のデザインでは悩んだ末に仮面部分にクロスをあしらい、頭部には平面の王冠をトサカ上に配置するデザインにしました。
このバランスは気に入っていたのですが、稼働させるとなると王冠がバイザーに当たってしまいます。そこでこの駒に関しては、仮面部分を上下分割にして、上は固定、下のみを稼働させる事にしました。パーツを綺麗に合わせなければラインが崩れてしまうデザインなので難しいかもしれませんが、これならデザインコンセプトを崩す事無く稼働させられると思います。
初代キング。全体的なデザインは気に入っていますが、制作から2年が過ぎ、改めて見てみると、ラインの整理が必要な部分がかなりあります。
その後造形作家集団-chevalier-のエンブレムレリーフの一部として造型したキング。仮面部分のシルエットを調整し、クロス部分もシルバーアクセサリーなどを参考に、より鋭角的なデザインにしました。
この二つが出来上がったら、更に他の駒もリメイクを進めていく予定です。
一応兜部分は鋳造出来ました。
現在型を少しずつ修正していますが、まだ目の部分にダレが見られます。後頭部のリベット表現も上手く出ていないようです。
シリコン型は出来上がった段階では上手く型が抜けない事が多く、注ぎ口を大きくしたり、空気穴を追加するなど、細かい修正をする事で綺麗に鋳造出来るようになっていきます。
それに加えて、今回はシリコンに気泡が入ってしまったため、その修正もしなければなりませんでしたが、幸いそちらは上手くいったので大事には至りませんでした。場合によっては型自体を作り直さなければいけないので、型取りは空気が入らないように慎重かつ迅速に行わなければなりません。
頭部パーツが荒れているのは恐らく鋳造時の温度が高すぎたためです。錫の鋳造は、温度が高すぎると荒れ、低すぎると隅々まで流れる前に固まって成型不良になってしまいます。このあたりの温度調整は、繰り返し鋳造して覚えるしかありませんが、ある程度型を温めて、錫は固まらない程度に冷まして流すのがいいようです。